2013年4月29日月曜日

カルト化した「ケータイ」産業

 先週のことなのだが、講義が1コマ空いていたので教科書を買いに行こうとしたところ、大学の敷地内に出店してるソフトバンク代理店の若者(以降「店員」と表記)に「iPhone に変えないか」と声をかけられた。

 しつこいので話を聞いてみたのだが、どうも店員の言うことが面白おかしく、ちょうどスマートフォンの購入を検討していたところだったので、色々質問してみることにした。

 面倒くさいし阿呆くさいので、やりとりの全てを逐一細かく書くのは割愛するが、店員の話を総合すると、以下のようになる。

  • 「解約金を支払ってあげるのはウチだけ」
  • 「Android は電池パックが外せるから壊れやすい」
  • 「iPhone は電池パックが奥深くにあるから落としても壊れない」
  • 「iPhone5 はデジタルな電波を発するため、アナログ電波を発する 4S よりも通信速度が早い」
  • 「Android の一般的な容量(ストレージのことを言いたかったらしい)は 500MB」
  • 「ストレージって何?」
  • 「bps って何?」
  • 「Android の通信速度は『2ギガ』」
  • 「Windows7 には iTunes が標準搭載されており、 iPhone アプリが開発できる」
  • 「iTunes から自作アプリがインストールできる」

 強いて言うなら、Android には Xperia arc ( SO-03C 等) という機種があったらしく、この機種はストレージ自体の容量が本当に 500MB 程度だったらしい。だがしかし、これは一般的なストレージ容量ではないし、店員は「ストレージ」という言葉も知らなかった。

 とりわけご苦労なことに、私が「その壊れやすい電池パックは、iPhone の場合どこにあるのか」と訊ねると、首を捻りながら苦し紛れに「中の方のちょっと左下の側、奥深くにあるんですよ」と、デタラメな話まで聞かせてくれた。

 彼は「知らない」と自分の無知を認めることは無く、私が矛盾点に対して質問を重ねる度に、彼は嘘を塗り重ねていき、次第に苦しそうに喋るようになった。

 こんな知ったかぶりを言う人は初めて見たので、正直驚いている。一体全体、どうして店員の口からこんな発言が飛びでたのか。

 よく言われる話だが、日本人の携帯電話普及率は総務省のサイトにも書いてあるとおり、既に加入率 100% を超えている。つまり、日本人 1 人あたり 1 台以上の携帯電話を持っている計算になり、キャリアは既存の顧客を奪い合う形となっているわけだ。いわゆる「 2 年縛り」のシステムを見ても分かるように、中途解約に違約金を課すことで顧客を引き止めようとするが、それに対抗して別のキャリアが「乗り換えなら違約金を支払う」と言い、顧客の激しい奪い合いが展開されている。

 私は店員に「LTE はめっちゃ早いっすよ…(>_<)」って言われたので、「通信速度はどれぐらいか」と訊いたところ「3G だとサイトを開くのに 3 秒ぐらい待つんですけど、LTE はホント一瞬っすね」と答えをいただいた。通信速度の単位も知らず、個体差の激しい例を出して抽象的な表現で答えられても、何の説得力も感じない。

 彼らは顧客の獲得(奪取)に必死になるあまり、このように「とにかく契約さえ出来れば、その場しのぎでも何でも良い」という代理店まで登場した。契約にこぎつけるまでに必要な「マニュアル的知識」だけを一生懸命丸暗記している店員にとって、客に嘘・デタラメを言うことは罪悪ではなく、契約が全てなのかもしれない。「知らない」と無知を告白して顧客を逃がすことを恐れていたのだろう。

 このように苦し紛れに嘘を塗り重ねつつも強引に契約しようとする代理店の姿を見て、カルトの勧誘に似たものを感じざるを得なかった。このようなケータイ産業の構図について遺憾の意を表明したいという思いもあったが、ケータイ産業に「従事」する側である店員にそのようなことを言っても何かが変わるわけでもない。その上、次の講義の時間も迫っていたので、私はやむなく退散することにした。

 当然、私がこの代理店と iPhone の契約をすることは無かった。

 なんとも虚しい話だが、このような激しい顧客の奪い合いにおいて、「高度な情報機器」である携帯電話は、押し売り販売じみた商売の「道具」にされている印象すらある。ケータイ産業にとって顧客が「大量消費時代の商売のコマ」でなく「高品質な通信機器を提供する相手」になることを切に願いたい。

 余談だが、このような常軌を逸した虚偽を吹聴する代理店に場所を提供する大学側もいかがなものだろうか。



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